《寄稿No.14》小日向美穂「私の特別な日」
はじめに
・既存設定の誇張や創作設定あり
・地の文
・オチ、山場なし
・初めて書いた故文章は稚拙
これを踏まえて読んでください。
「私の特別な日」
思い出します。たしか土曜日だったと思います。いえ、間違いなくそうです。次の日が、日曜日でしたから。
あの日わたしは目指すところもなく、ふらっと街へ出かけました。わたしにしてはめずらしいことですが、学校もレッスンもお休みでつれづれだったのです。日が出て、あたたかな陽気でした、お昼寝したいような。
服はどんなだったでしょう。あのころは自分の身目形やセンスにも自信がなく、無頓着でした。あえて頓着しなかった、ともいえるかもしれません。
どこにいこうか考えながら歩きます。そもそもが冒険を好まないたちですから、あまり知らないようなところには行きません。結局、毎日の通学路から道を一本それたところにある、小さな書店に入りました。何回か本を買ったことがありました。
勝手知ったるという風で雑誌の棚をひやかした後、小説のコーナーでいっぱい並んだ背表紙を眺めるともなく眺めて歩くと、ひとりの作家さんの名前が目に留まりました。
知ってる、と思いました。わたしはあまり小説は読みません。ファンタジー小説を少し読むくらいです。ですが、たくさん読まないわたしだからこそ、読んだ本は案外忘れないものです。
幼い日に読んだとある本のことが、ありありと思い出されました。
その本は、上京した時に持ってきており、いま手元にあります。理論社「頭の大きなロボット」。物心ついた時から家(当然実家のことです)にあったいくつかの本の中の一つです。
寮の部屋に備え付けの本棚から取り出し、懐かしい表紙をそっと撫でます。
表紙には和田誠の手になるかわいらしいロボットのイラストが描かれています。きっとこのイラストが、幼いわたしにこの本を手に取らせたのでしょう。
ハードカバーの本です。ですが、大きさは文庫本より一回り大きいくらいです。なにかこのサイズの本に対する適切な呼称があるのかもしれませんが、わたしにはわかりません。いずれにせよ、小さかったわたしの手には、さぞ読みづらかったことでしょう。それでも読ませたのは、星新一の腕だと思います。
ユニークな発明品が、時には機に当たり、時には思惑から外れ、さまざまに展開していきます。地球に来た宇宙人が起こす騒動、悪魔、魔法の道具、未来の世界。それぞれの話がわたしを楽しませ、怖がらせ、戒め、まるで跳ね馬のように心を揺さぶります。
ファンタジー小説を読むのも、この本のおかげかもしれません。正確には星新一はSF作家なのですが、そんな気がするのです。
あの日、たまたま目に留まった新潮文庫「午後の恐竜」を携えて、わたしは帰りました。そしてその文庫本を読むにあたり、今と同じように「頭の大きなロボット」を引っ張り出して読み返したのは言うまでもありません。
当たり前のことですが「頭の大きなロボット」は子供向けに編集された本で(でなければ幼いわたしに読めるわけがありません)、ライトな話を主に載せていました。だから、「午後の恐竜」には比較的難しい話やとげの残る結末が多く、その差に驚かされました。それでもわたしは幼いころと同じように、わくわくしながら二冊を読んだのでした。
毛色の違う二冊の星新一。この二冊が、幼いわたしと今のわたしをつないでくれるような気がするのでした。
そして、次の日。日曜日、養成所でレッスンをしていたわたしを、凡百の候補生から正式なアイドルに引っ張り上げてくれたのが、今のプロデューサーです。感謝の念は、いくら注いでも足りません。まぎれもなく、この日プロデューサーと出逢うことで、わたしの人生は大きく変わったのです。
この劇的な出逢いと、前日の小さな出会いとは、何の因果もありません。しかしわたしはプロデューサーとの邂逅を思い出すにつけ、あの二冊を手に取らずにはいられないのです。
わたしは今日、誕生日を迎えます。プロデューサーや事務所の皆が祝ってくれるそうです。とってもありがたいものです。祝ってくれるのは夜だそうですから、今は寮の部屋で待機しています。目の前のテーブルには、二冊の本が表紙を見せて、お行儀よく並んでいます。
プロデューサーは12月16日が何の日か、覚えてくれています。ですが、あの日のことは、覚えているでしょうか。
難しいかもしれません。事務所のアイドルは200人近くいますから。でも、わたしはこの二冊の本とともに、いつまでも忘れないでしょう。
わたしの第二の誕生日を。
終わりに
ファンタジー小説が好きという設定があったような気がしたので、まあそれなら星新一に興味をもっててもおかしくないだろうと思い、設定を加えました。
あと、彼女の一人称は「私」であり「わたし」ではないです。ここも変えました。
ちゃんと12/16、我が担当の誕生日にこの記事が上がってるでしょうか。上がってるならば、遅筆ゆえ迷惑をかけた管理人様に謝罪と感謝を。上がってなければ、責任は全て当方にあります。管理人様にやはり謝罪と感謝を。
当日私は忙しく、祝うための行動は取れません。心の中で祝うのみです。代わりにこの記事を書きました。自己満足。
拙作を最後まで読んでくださりありがとうございました。
Writer:師匠(@wvIZEqg9xXpC8He)
小日向美穂P
寄稿の募集について
http://imas-cg.net/2017/11/24/52499323.html
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《寄稿No.14》小日向美穂「私の特別な日」のコメント一覧
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- 2017年12月16日 12:24 ID: vH1wwMVd0
- 時間合わせとかコッブも粋なことするやん
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- 2017年12月16日 13:16 ID: 4nij76KO0
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我こういうの好き
美穂ちゃんのSSそんな見かけないから、
これいいダイマだわ
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- 2017年12月16日 17:43 ID: t4b0GsI.0
- この何ともいえないふんわりと、また一種淡々とした雰囲気がとても美穂ちゃんに合っている
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- 2017年12月16日 23:05 ID: Qs.m0FCr0
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美穂ちゃんお誕生日おめでとう~
星新一は何回見てもいいよね、見る度に発見がある
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- 2018年01月03日 06:47 ID: 60dAGS.R0
- 脳内再生してほっこりした。
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